2016年5月10日、衆議院厚生労働委員会でひらかれていた障害者総合支援法案をめぐる参考人質疑で、当初招致を予定されていたALS(筋萎縮性側索硬化症)の岡部宏生さんが「やりとりに時間がかかる」という理由で、与党から出席を拒否されたというニュースがながれました。
まさか、そんな理由でほんとうに拒否したのだろうか、ということがとっさにうかびました。
いくらなんでも障害者を支援する法案の審議で障害を理由に出席を拒否するということは、ありえないだろう、日ごろ障害者と接していないとしても、良識の範囲で判断できるものだ、とおもったのです。
でも、そうではありませんでした。「障害」を政争の道具にするという愚をおかしたのです。
「日本障害者協議会」は早速「当事者抜きで当事者のことを決めるべきではない」と批判の声明を出しました。いまのところ、与野党とも相手を批判しているかたちです。
この件の背景になにがあったのか、よくわかりませんが、いくつかのやり取りのなかで、とばっちりのように当事者が意見をいう場をうばわれたようです。
東京新聞によると、「出席拒否が起きたのは、べつの法案を巡る対立からだ。(岡部さんの参考人)招致を求めた民進党に対して、自民党は見返りとして政府提出の児童福祉法改正の審議入りを要求。民進党は、野党四党が共同提出した保育士らの賃金を引き上げる法案の審議入りを求めた結果、協議は難航し、民進党は招致を断念した」とのことです。
つまり、
民進党、岡部参考人招致要求
→ 自民党、その見返りとして児童福祉法改正の審議入りを要求
→ 民進党、その見返りとして保育士等処遇改善法案の審議入り要求
→ 協議難航
→ 民進党、参考人招致断念。
ということになります。
あたまのなかに何個も?マークが浮かびます。なにがどうなって当事者の発言する場がなくなったのか、さっぱりわからないからです。
ただ、この協議をしている中で、相手の条件を飲むかのまないかのネックに「別の普通に話せる人に出て来てもらえばいい」
「国会に招くよりも患者を訪ねて話を聞こう」
「参考人として呼ぶとやりとりに時間がかかる」といった「障害」が理由になったのは確かでしょう。
民進党としては「障害者の参考人招致に何らかの条件を付けることは、障害者差別を是認することになる。無条件で参考人として認めるべき」と主張したとのことです。
私はこの主張に全面的に賛成です。
ただ、実際は代理出席として日本ALS協会常務理事の金沢さん(ALS当事者ではない)が厚生労働委員会の場にたちました。
民進党がなぜ、招致を断念したのかわかりません。招致を取り下げてから「障害者差別だ」というよりも、さまざまな手段を講じて、なにがなんでも招致すべきだったと思います。
いずれにしても、党利党略が優先するということ自体、この差別問題の深刻さをあらわしています。